ADDISON-WESLEY PUBLISHING CO.INC. U.S.A. PRICE: $9.95

 『パピーラブ』アディソン・ウェスレィ・パブリッシング社。アメリカ。価格:$ 9.95。これは1986 年にアメリカで発売された、アップル社のコンピュータ、マッキントッシュ用の「犬の飼育(?)」ゲームソフトです。ゲームの内容は、野良犬だったパピー(子犬)を拾って、いろいろと芸を教え、ドッグショーに出場させ、たくさんのトロフィーを獲得するという、たいへん単純なものです。上の画面のように、うろうろ歩いている犬がしばらくすると勝手に芸をします。そしてすばらしい芸を披露したらその芸に名前を付けてあげます。その名前を再びタイプすると、犬がまたその芸をし、うまくいったらご褒美に骨をあげてほめてあげ、失敗したら手でペシッと叩いてしかります。そのことを繰り返しながら芸の道を極め、ドッグショーに挑むのです。このゲームのおもしろさは、多くのトロフィーを獲得するところでも、いろいろと世話をして育てていくところでもありません。ただただ犬の愉快なしぐさや動きを見て楽しむところにあるのです。その芸たるやなかなかで、オリンピックの体操の選手並、いやそれ以上のもので、とうてい普通の犬では考えられないような芸なのです。(バク転なぞは朝飯前、「鼻逆立ち回転ジャンプ(上画面右)」なんてウルトラCもある)また、よく失敗するところが笑える。自分の芸に名前を付けてもらおうと「おすわり」をして、こちらを見てヘラヘラ待っている姿も健気でラブリー。このゲームの作者は、犬のことをとてもよく理解していると思います。なぜなら、かわいい子犬はその姿を見ているだけで十分ということを知っているからです。さらにこの商品パッケージ(写真中央)を犬小屋にしたところなんて、心憎い。ところで現在、日本では卵形のデジタルペットは社会現象にまでなっています。しかし、「育てゲー(飼育ゲーム)」の元祖は10年以上も前にアメリカですでにあったのですね。流石。
雑誌『WAN』(ペットライフ社刊)1997年3月号掲載